▼スコアサンプル
▼参考音源
収録:
日本の大学撰 第8集-相愛大学が奏でるコンクール自由曲集〈サウンド・グラデーション〉(大前哲)
演奏:相愛ウィンドオーケストラ
指揮:新田ユリ
おそらく紀元前400年頃、古代ギリシャの詩人ソポクレスによって書かれた「コロノスのオイディプス」という悲劇があります。あってはならない罪を犯したオイディプス王が、テーバイという都を追われ、食を乞いながら放浪を続け、最後の地であるコロノスにたどり着く・・・そして全能の神であるゼウスの雷と嵐の中、死んでいくというその悲劇は、様々な感情や心の葛藤を見事に描き出し、2000年以上前の神話ですが、今なお私たちの心に訴えかけるものがあります。
《かつて私は、王と呼ばれていた》は、この物語からヒントを得て作曲されました。ただし神話のストーリーをそのまま音楽にするのではなく、登場する人物の関係や、さまざまな感情を曲中の細かい断片として散りばめることにより、音楽での複雑さを表現しました。
口ずさむことが出来ないトリルを中心とした細かいモチーフと、反対にゆっくり重く奏されるコラールによる曲の開始から、長音階や短音階という私たちが慣れ親しんでいる音階とは異なる理論による中間部、同じ旋律が続きながら変拍子を挟み、スピード感がある打楽器とともに永遠と走り続けるような後半から、チューブラーベルやグロッケンシュピールなどの金属打楽器に彩られた華やかなフィナーレまで、目まぐるしく曲想が変化しますが、どの部分を聴いてもひとつの音楽的な素材ではなく、複数の素材が同時に存在するように作曲されています。そして聴いている方々、演奏している方々が「明るい曲」「暗い曲」というような単純な感情を持たないよう工夫しています。
演奏する上で何点かポイントがあります。曲の開始から続く木管楽器のトリルは、半音によるトリルを想定していますが、「ゆれ」が欲しいためのトリルであり、運指の都合で演奏し辛い箇所があれば、全音によるトリルでも問題ありません。吹奏楽では比較的珍しいと思いますが、金管楽器はTuttiで演奏する箇所が多数あります。響きの作り方はオーケストラの作品、例えばマーラーやR.シュトラウスという作曲家の作品を聴いて研究してください。打楽器は6人で演奏することを想定していますが、5人でも演奏は可能です。どちらもセッティングの図例は楽譜に添付してありますので、参考にしてください。
演奏時間は約7分30秒です。全日本吹奏楽コンクールの課題曲の演奏時間にもよりますが、自由曲として演奏することができます。また、オーボエとバスーン、コントラバスはオプションです。
沢山の方に聴いていただき、演奏にチャレンジしていただきたいと思います。(松本直祐樹)
タイトル:かつて私は、王と呼ばれていた-ソポクレス「コロノスのオイディプス」のための音楽
作曲:松本直祐樹
グレード:4
演奏時間:約7分40秒
Tp最高音:五線外G
レーベル:ティーダ出版
▼楽器編成
Piccolo / Flute 1,2 / (Oboe) / B♭Clarinet 1,2,3 / Bass Clarinet / Soprano Saxophone & Alto Saxophone 1,2 / Tenor Saxophone / Baritone Saxophone / (Bassoon) / Horn 1,2,3,4 / Trumpet 1,2,3 / Trombone 1,2 / Bass Trombone / Euphonium / Tuba / (Contrabass) / Timpani / 3 Wood Blocks / Ratchet / Marimba / Glockenspiel / Suspended Cymbal / 3 Toms / Snare Drum / Tubular Bells / Xylophone / Bass Drum / Tambourine / Crash Cymbal / Whip / Gong / Finger Cymbal