2016年、エリザベト音楽大学からの委嘱によって書き下ろした。委嘱に際し、「学校で伝統的に歌い継がれてきたグレゴリオ聖歌を用いてほしい」といお話を頂いたため、本作はグレゴリオ聖歌「Ave Maria」をモチーフとしている。加えて、曲題とした「祈りの手」はルネッサンス時代の画家、アルブレヒト・デューラーの描いた同名の作品及びその背景として語り継がれてきた有名なエピソードにインスピレーションを受けている。そのエピソードとは下記の通りである。
「昔、デューラーとハンスという若者がいた。二人も貧しい家に生まれたが、幼い時から画家になる夢を持っていた。しかし、絵の勉強をするためにはお金が必要である。ある時、ハンスはデューラーにこんな提案をした。『このままでは2人とも画家になれな い。2人のうちのどちらかが働き、もう1人のためのお金を稼ごう。そして1人の勉強が終わったら今度は交代してもう片方が働き、 相手を助けるのだ。』 話し合った結果、最初デューラーが勉強のたにベネチアへ行き、ハンスはデューラーのために鉄工所で働くことになった。 数年後、立派な画家となったデューラーはハンスと再会し、感謝とともに交代を申し出た。しかしそのき既に、ハンスは重いハン マーを持ち続けたため、絵筆が二度と持てない手になっていた。デューラーは自分を責め続けたが、ある日ハンスの家を尋ねると、 ハンスはデューラーが罪の意識から逃れられるようにと祈りを捧げていた。ハンスはデューラーを憎むどころか、救われるようにと祈り続けていたのである。デューラーはせめてもの償いをさせてほしいと、ハンスの岩のようにゴツゴツと変わり果てた手を渾身の筆で描いた。」
キリスト教に於ける自己犠牲の愛と祈り、そして深い友情の感じられるこのエピソードが、モチーフとった聖歌と私の中で結びついたことが本作の動機となっており、ハンスに於ける苦難や祈り、デューラーに於ける罪との葛藤、おいの友情、神への讃歌という構成になっている。誰とでも容易にコミュニケーションをとることができ、モノが身の回りに満ち溢れ現代であるからこそ、全ての人への感謝、そして音楽と関われることの喜びを忘れず私は生きていきたく思う。このような作品にする思いが作品を通して伝わるならば、作曲者として幸いである。 (田村修平)
タイトル:祈りの手(レンタル譜)
作曲:田村修平
演奏時間:約8分30秒
難 易 度:4
Tp最高音:五線外G
▼楽器編成
Piccolo
Flute 1/2
Oboe
E♭Clarinet
B♭Clarinet 1/2/3
Bass Clarinet
Contrabass Clarinet
Soprano Saxophone
Alto Saxophone 1/2
Tenor Saxophone
Baritone Saxophone
Bassoon
Trumpet 1/2/3
Horn 1/2/3/4
Trombone 1/2/3
Euphonium
Tuba
Double Bass
Timpani
4 Toms
Wind Chime
Snare Drum
Crash Cymbal
Suspended Cymbal
Bass Drum
Tam-Tam
Anvil
Vibraphone
Xylophone
Marimba
Glockenspiel
Chime
Piano
▼スコアサンプル