《楽曲解説》
演奏能力の段階に対応した4つのグループ(初心者・中級者・上級者・専門家)からなる計16人のホルン奏者のために作曲されたこの作品は、ホルン演奏における3つの基本的なエクササイズが合奏として纏められた練習曲である。
第1部のロングトーン・エクササイズでは、様々な音程の吹き伸ばされた音の集積と密度の変化が取り上げられ、第2部のリップスラー・エクササイズでは、奏者はあたかも常に14本のナチュラル・ホルンを瞬間的に持ち替えながら演奏しているということに着目し、様々な倍音列の集合体としての音響を作っている。そして第3部のタンギング・エクササイズでは、E♭ の中心音を背景として、音の空間的移動がテーマとなっている。
タイトルの「コルヌコピア〜豊饒(ほうじょう)の角」は、ギリシャ神話の最高神であるゼウスの幼時に、アマルテイア呼ばれるニンフが乳を与えた時の山羊の角のことを指す。その角(cornu=ホルン)からは望むままに食べ物、飲み物、果物、花などが溢れ出たといわれ、物の豊かさを象徴するものになった。この作品では、14本の角を持ち、それぞれの角の様々な音(倍音)を駆使する16人の奏者達から、少なく見積もっても2000種くらいの音が溢れ出て来るだろう、それらが「豊饒の音響」として鳴り響くことを期待したい。1995年にロンドンで開催されたホルン奏者のためのイヴェントHorn Day
のために作曲。(田村 文生)
タイトル:コルヌコピア〜豊饒の角
作 曲:田村文生
グレード:group1 5
group2 1
group3 2
group4 4
演奏時間:約5分30秒
レーベル:ティーダ出版
楽器編成:
Horn(group1 professional/group2 beginner/group3 intermediate/group4 advanced)
▼サンプルスコア